厠草子

これで尻でも拭いてください

モードがやりたい

この秋は、この何十回目の秋こそは、モードになりたい。


夏が終わる気配がしてきた。今年の夏もいっぱい好きな服を着た。春から夏にかけて友だちと絶縁したし、お盆休みには親族宅で大暴れしてとんぼ返りしたり、したけど、それでもいい夏だった。好きな服をおおむね好きなように着ていられたから。

夏服は単価が安いから冒険しやすい。服オタになれない下手の横好きにはいい季節だ。それに何より、わたしの大好きなノースリーブが着られる。わたしの肩がゴツいのはこのためだったのか!とさえ思う。肩をそびやかして袖のない服を着るのは楽しい。

だけども、そんな季節ともそろそろお別れの準備をしないといけない。

そりゃまだまだノースリーブは着られるけど、上にカーディガンやジャケットを羽織る必要は出てくるわけで。それだけであの軽やかさ、開放感は半減、いやそれ以下になってしまう。

ただのインナーには興味ありません。ノースリーブ、タンクトップ、深めのVネック、ペチコート必須な透け透けの生地、馬鹿みたいにでかい動物柄、無駄に背中にスリットのある服があったら、あたしのところへ来なさい。でもそれだって市場に出回っているうちなのである。もう次の衣替えが近づいてきている。


今年は、季節の変わり目に装い全般について振り返りをするようにしていた。冬、春、夏を振り返って前を向くと、秋である。

1年前はどうしていただろう。なんかカーキのもたっとしたシャツワンピースを買った気がする。ボーイッシュというか、ちょっとゴツゴツした感じの、趣味で革小物の手入れとかしてそうな感じのワンピースだった。

あとは深めのVネックの黒いワンピースか。恋人が選んでくれただけあって、私によく似合っていて好きだ。


だけどもでも、せっかく一瞬で過ぎる季節なのだから、何かひとつ遊んでみたい。今持っている、過不足なくわたしにフィットする装いもいいけれど、たまに(?)は意味わかんない服を買っておのれを脱ぎ捨てたい時もある。なんせ夏はわたしの季節だったから、秋はわたしじゃない季節にしてみたい。


そんなわけでモードである。

モードがやりたい。なんか顔がシュッとしてる人やタッパがあって持て余してるような人が有利そうだし。違うか。そんなことないな。肩がゴツいのはありだろうか。

でもセンスはぜんぜんない。しかも顔や頭をつるっとプレーンな感じに寄せていたから、多分真っ黒とかひらひらとかずるずる引きずりそうなやつとかが死ぬほど似合わない、気がする。丸メガネなんてお呼びじゃないでしょという気もする。派手な化粧も苦手だし。

それにお葬式なんか?ってくらい暗い服、毎日着てたら飽きちゃうかな。そんなことないかな。あと長いパンツってヒール必須じゃないの。遅刻魔には厳しいものがある。

ぜんぜんわたしらしくなさそうだけど、なんかでもいいんだよな。進んで不自由なカッコしてるというか、人工的な美に寄せているというか、そういう装いに矜持を感じる。


ロリータやゴシックはまた着物とかの世界に近いのかなーと思っているので、日常着で挑戦するならモードだな。でもモードって何したらいいんだ。初心者向けのやつとかないのか。

雑誌を見て勉強しようと思ったら、なんかやばい組み合わせのスナップばっかりで難しそうだった。その煮しめたような色のボタンがいっぱいついているジャケットはオシャレなんですか。わたしがやったら、古着屋でいちばん安い服を着てきた人みたいにならんか。そんなの、海外セレブがやるからありなんじゃん。それに服屋さんで見た、白黒で凛としてる感じじゃない。どうやらモードにはいろいろあるらしい。難しい。


だからまあ、自分なりのモード。取り急ぎで手始めなモードをやりたいと思う。己を脱ぐ練習であり、やはり己でないとなれば脱ぐことになるのも含めて練習である。というわけで、次のお給料日がきたら、いかれたニットでも買いに行こうと思う。